今年度もあと数日で終わりです。

今年度もあと数日で終わりです。

本日の新聞には、この時期恒例の熊本県内の教職員異動が掲載され、来所した保護者や子ども達は、「あの先生いなくなる!」とか「また担任変わるらしい!」とか「1年契約だったんだって!」とか、驚きや悲しみ、残念な気持ち、どうしようという不安の気持ちなど、様々な気持ちをことばで表現しながら去っていきました。

ただ、気持ちの通りの表情をしている子もいれば、気持ちとは逆の表情をしている子もおり、なかなか表情からは本当の気持ちを読み取りにくい子ども達、来年度も色々と苦労するんだろうな、と思いつつ見送った1日でした。

 

以前、ASDの子ども達の表情認知について「広報うと」に寄稿したことを思い出し、平成27年9月号の掲載文をご紹介します。

 

「気持ちを表情に表すことの難しさ」

子どもに何かが起こった時、怒っているのか、悲しいのか、嬉しいのか、不安なのかは表情を見ればわかる…これはすべての子ども達に共通することでしょうか?自閉症スペクトラム障害(以下ASD)の子どもの中には、気持ちを表情に出したり、読み取ったりすることが苦手な子が多く、時には真逆の表情をしていることすらあります。

ASDの子ども達が苦手とする表情を介したコミュニケーションは、社会性の問題の中核となっており、様々な研究も成されています。コミュニケーションを円滑にするための重要な行動である「表情模倣」に関する京都大学の研究は、怒り表情と幸福表情に対し、目に見える模倣があるかどうかを評価したものです。ASDの成人ではどちらの表情についても表情模倣の頻度が少なく、頻度が低い人ほど社会性の障害が強いということがわかってきました。

自分の気持ちを表情に表す、それは当たり前のことのようですが、脳機能の違いがあると、それはとても困難なこととなります。まいすてっぷに通う子どもの中にも、人の表情を読み取ったり、自分の気持ちを表情に表すことが難しい子どもが何人もおり、付き合い慣れた私たちであっても気持ちの読み間違いが生じます。先日一人の小学生と話していた時、話しの内容は明らかに「怒ったこと」なのですが、顔はむしろ笑っています。その子に「怒りを表情に出さないの?」と聞いたら、「そんな大変なことやってられないよ。」と答えました。その子にとって気持ちを表情に出すことは、「オートマティック」ではなく、いちいち考えなくてはできない大変なことなのだそうです。

相手の話を聞きながら、自分自身の気持ちを言いながら、それに合わせた表情をすることは、ASDの子ども(全てではありませんが)にとっては難易度が高く、それはコミュニケーションそのものを阻害してしまいます。親や先生が怒った顔をしていても、そのしかめた顔に何の意味があるのか、実は読み取れていないかもしれません。そんな時子どもが平気な顔をしていたら、ふざけていると決めつけずに、本当の気持ちを聞いていく必要があるのではないでしょうか。そういう友達や大人の存在が、その子の周囲にあるとないとでは、その後の人生すら変わってくるかもしれません。

 

参考資料:京都大学ホームページ研究成果より抜粋

「自閉症児童は表情のよみとりが苦手」(平成26年12月発表)

「自閉症スペクトラム障害で目に見える表情模倣の障害(平成27年4月発表)